さて、仕事について話さないか

絶対の信頼をおく上司はそろそろ第一線を退く。
尊敬する先輩は自分のキャリアを形成する為に違うルートを進む。
頼りにしている後輩は出向から親会社へ戻り、積み重ねたノウハウを還元する。


同じ釜の飯、とまでは言わないが、同じ意思を持って集まってきたメンバーは、またそれぞれの方向を向き、進んでいく。


遅くとも1年以内に最初の波が来て、そのうねりはあっという間に環境を変えていく。
2年もすれば誰もいなくなる。


俺は?


「会社は絶対変わらないから」


諦めでも悲観でもない、事実を先輩は言う。
こんな環境の中、流されないように、自分の道を切り拓いてきた彼だからこその発言だ。


俺はまだ、変えようとしている。
企業が俺のことを迷惑がるまでやろうと思っている。
今まではそんな余裕もなく、それよりもなによりも、自分が一人前になることに必死だった。
周りを見渡す広い視野は持てなかった。
いや、見ても何もできなかった。
けどもう一人前だとか半人前だとか言ってられない。
自分が声をあげなければ始まらない。



繰り返し確認するが、2年もすれば誰もいなくなる。
正確に言えば、この場所からいなくなる。
間接的に関わることはあるだろう。
ただ、同じ強い意思を持って突っ走ることはできない。
みんなで走れる時間ももう限られているんだ。


俺は自分を少しでも外に出して、共鳴してくれる人間を超音波探査機のように探さなければならない。
そして探しあてた原石を磨かなければならない。


今あるのは仲間が離れ、見つからない不安。
それが俺の動きを鈍らせる。
泳ぐのをやめたら、死んでしまう。