overcome

色んな失敗をしながら仕事は覚えるもんだが、一度した失敗は二度する必要はない。
後輩がお客さんとのやりとりで失敗をし、苦しんでいる。
おそらく休みの日にも気が休まらない状況だろう。
携帯電話の着信にもいちいちびくびくする、そういうような狂った精神状態なんだろう。
やってしまったことに関しては今更ひっくり返りはしないし、彼の失敗は他の人の失敗を未然に防ぐことぐらいしかできない。
本人の地獄を見るような苦悩は消えないし、そこで人間の本性も出てくる。
結局それは失敗の量や質ではなく、失敗をした際の乗り越え方だ。
「この仕事は難しい」とか、「この仕事はきつい」とか、そういう感情を抱く暇があったらとにかく動き、動けないのであれば考えるしかない。
どの仕事にだって楽なものはないし、その仕事なりの地獄があるわけで、仮にそんなものがないのであれば、それは仕事ではない。
「素人が立ち入れない領域にいる」という自覚は社歴が進むにつれて強く持つようになったが、それはこの仕事でなくたってそうだ。
建築や不動産の業界だって、金融の業界だって、司法の業界だって、芸能の業界だって、なんだってそう。
「素人が立ち入れない領域」なんだ。
否、そう思って取り組んでいるかどうかだ。
素人が立ち入れない領域で過ごしているんじゃなくて、素人に立ち入らせないようなプロ意識を持って過ごしているかどうかだ。
少なくとも個人的にはそう思う。
中途半端に痛い目にあって、トラウマになるような地獄を見るような経験は、やはり人に勧められない。
ただ、逆境でその人がどういう反応を起こすかはその人次第。
テクニックやスキームなんざいくらでも構築できる。
そういうものを教える上司は多い。
しかし、根本的な心構えの部分をちゃんと言及する人は少ない。
自分のスタンスにもよるだろうし、そもそもそれは教えるものではないからだ。
「俺たちが若い頃は」とか、「今の若いやつは」とかいう話は心構えの話ではない。
それは小言だ。
そういう話じゃない。
この仕事はどんなに人に影響を与えるか、お前の言動がどんなに人に影響を与えるか、そういうことを考えているかどうかだ。
そういうことを考えたら、その場しのぎの言い訳は絶対出せなくなる。
客の悪口だって、配慮のない言葉だって、自己満足に近い押し売りだって出なくなる。
そういう心構えでやっているかどうかだ。
心が折れるほど辛いことだって、トラウマになるほどの苦しみにだって、耐えられなくなるかもしれないが、最後の最後まで言い訳は出なくなる。
それでいいんだと思う。



根本的にそういう成長が出来ない人は、そういう痛みを味わうことなく過ごせる場所を見つければいい。
そんな場所がないことに気付くだけだから。