舞台裏の給水ポイントにて

朝起きてから夜眠りにつくまで、頭の中が熱い。
常に興奮状態にある。
体の疲れはある程度コントロールできても、頭の疲労はとれない。
疲労なのかもわからない。
ただ、常に覚醒状態だ。
現場で起きている出来事とも、会社の中で評価対象になるような日々の業務とも違う別次元のフェーズが見え隠れする。




4月に新しい部署に異動してから、毎日物凄いスピードで時間が過ぎていく。
自分が作った流れに自分自身が振り落とされないように、必死に前を見る。
小さなミスや失念が命取りになる。
相変わらず危なっかしい。
それでも異動の仕方を考えると注目度は高い。
一言一言試されている。
そして、実力値を正確に計測されている。
彼らのスカウターで。


計られていると言ってもあくまで社内。
社外での活動、自分のルート、スキル、交渉スキームなどは殆ど知られていない。
だからこそ他部署から見れば結果だけ社内に持ち帰るような報告になる。
それでいい。
相手は社内ではなく、社外なのだから。




完全にキャパギリギリでの仕事が続いている。
ペースを落とすようなこともできない。
全力でやればすぐ終わることでもなく、じっくりやればいつかは終わるようなことでもない。
まるで800mだ。
案件が次々に飛び込んでくる。
一つ一つ、全て「俺に」来ている。
誰かに振り分けるわけにもいかない。
俺がやらないといけないのだ。
指名で来る仕事とは、そういうもんだ。



一つ不安になるのは、自分の中では既存のスキームとは全く異なる開拓をしているだけに、その部分に関して言えば踏襲するストックがないという点。
規模の大きな会社だとは言え、全ては昔からの財産で食っているのだ。
これはもしかするとこの業界全体に対しても言えることなのかもしれない。
動かす物や金のボリュームが大きなだけだ。
外資ベンチャーの狩猟的な企業とは、風土が根本的に違うのかもしれない。
創業者だけが新進気鋭の気概を掲げていた。
経営者が最年少の上場企業だった。
しかし、それはもはや40年も昔の話だ。



ただ、新しいことをしようとしているのに怯んでいるようだと、結局何も変えられない。
方法論に正解不正解はないが、弱気になるのは確実に不正解だ。



社内を見れば相変わらず他部署との連携が永遠のテーマとなっている。
新しい部署の先輩と話をしていて出てきた言葉。
「俺らならまだしも、若い奴らじゃ無理だよあれ」
どこでも同じような問題を抱えているものの、もはや「若い奴ら」ではなくなってきた。
だからこそ自分で仕事の組み立てを任せられている。



着々と準備をする。
今が踏ん張りどころだ。