指の話

仕事で付き合っている銀行の人と呑んだ。


飛び込みで入ってまる二年。
いわゆる「懇親会」以外で呑むのは初めてだった。


「銀行もキミらがやってるみたいに個人と法人ってあって、やっぱ中の人間は法人が花形って思ってやるんだよね。
ただ、俺はどっちもやってきたけど、個人の方が断然難しいし、時間がかかる。
個人のお客さんは理屈じゃ動かないから。
なおかつ一度扉が閉まると、まず二度と開かないから。
そーいうのは下に教えにくい分野だし。
たろーさんはそういう時間かけてでかいのとってくるようなやり方の方が向いてるよ。
俺がそうだから。
でもおたくの会社にしろ、うちの銀行にしろ、短期的な仕事に焦点当てるでしょ?
だからそんな悠長なことも言えないんだけどね。
それでも短期と長期、3対7ぐらいのウエイトでやんなきゃだめなんだよ。」




今までいた支店長が異動になり、支店の体制が慌ただしく変わったらしく、語調にも力が入っていた。



「俺もさあ、今まで10人以上の支店長に支えてきたけど、異動した○○支店長はね、やっぱ歴代の支店長の中でもすごく能力が高い。
俺の知る限りでも三本の指が入るよ」





いや三本の指に入るよ、ね。